大腸がんと血便の関係性

血便が出ている方で最も注意したい病気は、大腸がんです。

ところが、血便が出ていても「痔なのかな」と考え、なかなか医療機関へかからない方の方が多いのではないでしょうか?当院では、「がん死ゼロ」を目指して、日々診療をおこなっています。血便症状のある方には、少しでも早く大腸内視鏡検査を受けていただきたいです。

そこで今回は、大腸がんと血便の関係についてお伝えします。

 

大腸がんとは?血便とは?

まずは、大腸がんと血便について、その定義を解説します。

 

大腸がんとは

細胞分裂がおこなわれた際、なんらかのエラーが起きると、正常ではない細胞、勝手に増殖し続ける細胞が生まれてしまうことがあり、これが「がん」のもとです。

通常、エラーが起きた細胞は「アポトーシス」という作用によって排除されるようになっており、すぐにがんになることはありません。ですが、アポトーシスをすり抜けてしまったり、アポトーシスの機能がうまく働かなかったりした場合には、排除されなかったエラー細胞が増殖し、がんとなります。

 

がんを含め、「正常とは違った成長をしている細胞」のことを新生物と呼びます。大腸の場合、ポリープも新生物の一種です。ポリープは他の臓器へ転移していくことはないので、悪性ではないという言い方をします。

 

新生物の中でも、他の臓器へ転移するものが悪性新生物、がんということになります。大腸に発生した細胞のうち、正常ではない増殖をして、他の臓器へ転移していくものが大腸がんです。

 

血便とは

血便とは、肛門から出血する、便に血がつくといった状態を総称した言葉です。

痔からの出血なのか、大腸がんからの

出血なのかなど、出血の原因とは無関係に「血便」と呼びます。

 

血便は大腸がんのサイン

血便は、大腸がんのサインの可能性があります。

大腸がんは、進行すると出血をきたすことが多いです。進行していない場合は、出血しません。

 

便に血が混じっているかどうかを調べる「便潜血検査」を受けたことがある方もいると思います。この検査では、早期の大腸がんをみつけることはできません。

便潜血検査で引っかかって、結果として大腸がんが見つかったような場合は、進行がんの可能性が高く、残念ながら手遅れということも考えられます。

 

便潜血検査は、あくまで大腸カメラ検査を受けるべきかどうかを簡易的に判断をする検査です。つまり、便潜血検査を受けること自体で、腸管内に病気があるかどうかは判断できません。「便潜血が陰性」だからといって、大腸の病気はありませんということではないのです。

 

進行した大腸がんにより出血する場合は、どこに大腸がんがあるかで血液の色は変わります。肛門から遠い、盲腸近くにあれば血液が酸化して黒くなることもあり、肛門に近い直腸などにあれば鮮やかな赤になりやすいです。もちろん、色や血便の形状に関しては個人差があるため、一概には言えません。

ただし、血液がポタポタと垂れてくるような場合は、肛門付近の大腸がんの可能性があるということはいえるでしょう。

 

血便がでない大腸がん

早期の大腸がんでは、血便が出ません。ですから、早い段階で大腸がんをみつけるためには、出血が起こる前、何らかの症状を感じる前に大腸内視鏡検査を受けるしか方法はないということになります。

 

血便が出ている場合は、当然、大腸内視鏡検査を受けないといけません。ある段階で検査を受け、その時は大腸がんがなかったとしても、その後時間が経過すれば、大腸がんが生じている可能性はあります。「今」大腸がんがあるかないかがわからない以上、ドックとして、大腸内視鏡検査を定期的に受ける必要があります。

基本的には、ある時点での大腸内視鏡検査で特に問題がなかったとしても、2年に1度くらいのペースで検査を受けることをおすすめしています。ポリープがあった場合は、1年後には再確認をしてもらうことを推奨しています。

 

血便がでたら疑う病気

「血便が出たら大腸癌だ」と決めつけることはできません。大腸がん以外にも、血便が出る病気はいくつか考えられます。

 

・痔

・虚血性腸炎

・大腸憩室

・炎症性腸疾患など

 

実際、血便の原因として最も多いのは痔です。大腸内視鏡検査をして、出血の原因が痔だとわかれば問題ありません。

 

1つ注意していたただきたいのは、肛門科などで「痔」だといわれたとしても、大腸内視鏡検査をしていないのであれば、大腸がんの可能性は排除できていないという点です。痔と大腸がんのどちらもある方というのは少なくありません。

大腸がんが「ない」ということを確かめるには、大腸内視鏡検査を受ける必要があります。

 

まとめ

今回は、血便は大腸がんが原因の可能性があること、また、大腸内視鏡検査をおこなわなければ大腸がんの有無はわからないこと、この2点を中心にお伝えしました。

もし血便の原因が本当に大腸癌であった場合、かなり進行した大腸がんである可能性が高いです。血便の原因としては痔が最も多いですが、大腸がんが「ない」ことを調べない限りは、安心できません。

血便があった方は、早いうちに大腸内視鏡検査を受けましょう。