膵炎

膵炎とは

膵臓は、胃の後ろ側にある、左右20cmくらいの細長い臓器です。十二指腸に囲まれた部分を「膵頭部」といい、幅が広くなっています。反対側の脾臓(ひぞう)に接していて幅が狭い部分を「膵尾部」、真ん中部分は「膵体部」といいます。
膵臓は、私たちが食べたものの中のタンパク質を溶かす消化液である「膵液」を作り出して十二指腸へと送り出す働きと、インスリンなどのホルモンを作って体内の糖分などを調整する働きがあります。 膵炎とは膵臓が炎症を起こしている状態のことです。具体的には、十二指腸に送られるはずの膵液が、さまざまな原因により十二指腸にたどり着く前に膵臓自体を消化してしまい、炎症を起こしています。すると、膵臓周辺の他の組織に影響を与えたり、膵臓の働きを衰えさせたりします。
膵炎には急激な炎症が起こる「急性膵炎」と、長期間にわたり繰り返し炎症が起こることで膵臓の細胞が徐々に壊されて線維成分に置き換わってしまう「慢性膵炎」があります。

膵炎の症状

膵炎には大きく、急性膵炎と慢性膵炎があります。

急性膵炎

急性膵炎の症状は、食後や飲酒後の上腹部(みぞおち辺り)の強烈な痛みで、背中の方にまで広がることもあります。また、吐き気や嘔吐、発熱などを伴うこともあります。炎症が進むと膵臓全体が腫れ、膵臓から水分が漏れ出て腹部全体に広がり、下痢や便秘、腸閉塞を引き起こすこともあります。また、急性膵炎の原因が胆のう結石(胆石)の場合は、黄疸となり茶褐色の尿が出ます。
急激に症状が悪化する時期を過ぎると、膵臓や周囲の組織が壊死し感染を起こしたり、膵液などの液体が入った袋状の貯留物(のう胞)を生じたりもします。

慢性膵炎

慢性膵炎の症状は、病期によって異なります。

  • 代償期」
    膵臓の機能が保たれている初期段階で、腹痛の発作が数年にわたって数カ月ごとに繰り返されます。
  • 移行期
    膵臓の機能が低下し炎症が軽くなるため、その痛みは徐々軽くなっていきます。
  • 非代償期
    さらに進行し、消化吸収の働きが低下すると、消化不良や食欲不振、悪臭の下痢、脂肪便、体重減少がみられます。また、インスリンの分泌にも障害が起こるため、糖尿病を発症したり悪化させたりすることもあります。

膵炎の原因

膵炎の原因は、急性膵炎と慢性膵炎とで少し変わります。

急性膵炎

急性膵炎の主な原因は、アルコールと胆石です。アルコール性は男性、胆石性は女性に多くみられます。アルコールの長期大量摂取により膵液分泌をコントロールする輪状の括約筋が痙攣し、膵液がうまく流れなくなることが原因の一つと考えられています。また、胆石が膵管と胆管の共通する部分にはまり込み、膵液の流れを止めてしまう場合や、胆石がある胆管の炎症も原因となります。 その他の原因として、手術や処置後、薬剤によるもの、血中中性脂肪高値などがあります。

慢性膵炎

慢性膵炎の原因の多くはアルコールです。長期間にわたる大量飲酒により膵炎が繰り返されることで、正常な細胞が徐々に破壊され、膵臓が線維化したり、膵臓の中に石ができたりします。特に男性では、アルコールが原因となる慢性膵炎が多くなっています。 その他に胆石やストレスが原因となることもわかっていますが、原因不明で発症する場合もあり、これは女性に多くみられています。また、遺伝子の異常が原因で慢性膵炎になりやすい家系があり、若いうちに発症することあります。

膵炎の検査

急性膵炎

飲酒後や脂肪分の多い食事後の強い上腹部の痛みや、押したときの痛みがあれば、まず血液検査や尿検査を行い、膵臓特有の酵素の上昇具合を測定します。次に超音波検査や腹部CT検査やMRI検査などで膵臓の状態を画像で確認し、重症度を判定します。

慢性膵炎

慢性膵炎が疑われる場合には、病状に応じて次の検査を行います。血液検査を行うこともあります。

  • 腹部レントゲン検査
  • 腹部超音波検査
  • CT検査
  • 膵胆管MRI検査(MRCP)
  • 超音波内視鏡(EUS)検査
    内視鏡を挿入し、十二指腸や胃の壁から膵臓に超音波をあてて、膵臓全体、胆管、周辺臓器を確認します。
  • 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法(ERCP)検査
    内視鏡を利用し十二指腸から膵管を造影する検査で、主膵管と枝分かれした膵管を確認します。ただし、膵管への刺激があるため、検査後の急性膵炎のリスクがあります。

膵炎の治療方法

急性膵炎

急性膵炎は、入院治療が原則です。絶飲食によって膵臓を休ませ、脱水予防のために点滴を行い、痛みに対しては鎮痛剤を用います。重症の場合は集中治療が必要となります。
胆石による急性膵炎の場合や、のう胞の感染や出血があれば、内視鏡で胆石や壊死した組織を取り除きますが、手術が必要になることもあります。

慢性膵炎

慢性膵炎の治療は、病期によって異なりますが、まずは禁酒と禁煙です。
初期(代償期)は、鎮痛剤や炎症を抑えるお薬を用い、低栄養に注意しながら脂肪分を制限した食事に切り替えます。
非代償期には、消化不良による栄養の吸収低下を防ぐ消化吸収剤や、胃酸を抑えるお薬などを使用します。また、血糖をコントロールするため、糖尿病治療のお薬を服用します。 なお、場合によっては内視鏡的な治療や手術が行われることがあります。