いぼ痔があっても大腸カメラは受けられる?

「肛門外科」の方がよりよい理由としては、肛門がそもそも外科領域の臓器であることが挙げられます。痔には種類があり、軟膏で治る場合もあれば、外科的な処置が必要な場合もあります。「肛門内科」と掲げている病院もありますが、肛門内科では基本的に外科的な処置はおこなえません。外科の経験のある医師が在籍する医療機関であれば、必要なときにすぐに処置をしてもらうことができるでしょう。

 

「いぼ痔が邪魔で大腸カメラ検査を受けられないのでは?」「検査でいぼ痔が悪化するのでは?」といった心配をされる方がいます。大腸カメラは主に大腸内の炎症やがんといった大きな病気を見つけるためにおこなうもので、痔があるからとためらわずに受けていただきたい検査です。

今回は、いぼ痔がどういった状態か、また、いぼ痔によって制限される医療行為があるのかどうかについて解説します。

 

いぼ痔(痔核)とは

いぼ痔は内痔核と外痔核に分けられます。強いいきみや慢性的な便秘などによって、肛門周辺の静脈叢(じょうみゃくそう)に圧力がかかると、血流が悪化して血管が腫れることがあり、これがいぼ痔です。

 

内痔核は、肛門の内側にある粘膜部分にできたいぼ痔です。初期は肛門の内側にとどまっており痛みもありませんが、大きくなるにつれ肛門の外側に出てくるようになり、出血を伴い、痛みが出る場合もあります。「嵌頓(かんとん)痔核」といって、肛門の外に出てきた内痔核が腫れ上がって激痛を伴う状態になると、医療機関で整復したのち、外科的な処置(手術)をしなければ治りません。

 

外痔核は、肛門外側の皮膚部分にできた痔核です。皮膚には神経が通っているため、初期の段階から痛みを感じます。「血栓性外痔核」といって肛門に血豆ができた状態は、とくに痛みが強いです。

 

いぼ痔は命に関わるような病気ではありませんが、痛みで排便が怖くなってしまったり、長く座れないなど生活に支障が出たりすることはあります。急激な症状が出た場合や症状がつらい場合には、適切な処置が必要です。

 

いぼ痔があるときに注意すべきことは?

いぼ痔のある方に注意していただきたいことについてお伝えします。

 

医療行為で注意すべきこと

いぼ痔によって制限されるような医療行為は、基本的にありません。もちろん、大腸カメラ検査も問題なくおこなうことができます。

できない検査・使えない薬などはないので、ためらわず、安心して受診してください。

 

日常生活で注意すべきこと

いぼ痔は命に関わらないとはいえ、出血や痛みが出ては快適に過ごせませんので、悪化させないことが大切です。

 

最もいぼ痔によくないのは、便秘です。便を出そうとして長時間踏ん張ることで、肛門周囲の静脈叢に負担がかかり、いぼ痔になります。トイレに座る姿勢そのものが肛門に負担となるため、トイレに長時間こもるのもよくありません。便意を感じてからトイレへ入ることが大切です。

 

そのほか、痔によくないものとして、アルコール、刺激物、運動不足などが挙げられます。当クリニックでは、生活指導や食事指導も含めた痔の総合的な治療をおこなっていますので、痔でお悩みの方はぜひご相談ください。

 

いぼ痔でも大腸カメラは可能

いぼ痔をはじめとして、切れ痔や痔瘻があったとしても、問題なく大腸カメラ検査を受けられます。「痔の痛みがつらくて検査が受けられるか心配」ということはあるかもしれませんので、あらかじめ痔の状態についてもご相談いただければと思います。たとえば、嵌頓痔核の状態であれば、まずは軟膏などを使って腫れや炎症を抑えてから大腸カメラ検査をおこなうべきです。

 

「出血しているのは痔だと思って放置していた」という方の中に、大腸がんなど別の要因があることも少なくありません。自己判断せず、定期的に調べるのがよいでしょう。大腸は、カメラを入れて目視で確認しなければ状態がはっきりとわからない臓器です。大腸がん、大腸がんになりうるポリープ(前がん病変)は、早期発見できれば予後も比較的よいので、早期発見できるよう定期的な検査をおこないましょう。

 

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、40歳から推奨されています。 40歳では自覚症状に関わらず一度お受けいただき、その後はポリープの有無などによって個別に検査の間隔をご提案いたします。

 

大腸カメラ検査を受けられない場合とは?

痔があっても大腸カメラ検査は受けられるとお伝えしましたが、以下のような方は検査を受けることができません。

 

・穿孔リスクのある方

腸がふさがってしまうほどの大腸がんの疑いがある方、腸閉塞の方など、大腸の穿孔(穴が開く)リスクのある方は大腸カメラ検査は受けられません。

 

・大腸カメラ検査前の下剤を飲めない方

大腸カメラ検査の前には、腸の中を綺麗にするために下剤を2リットルほど服用します。この下剤が飲めない方は、検査が難しいです。ただし、当クリニックではさまざまな種類の下剤と検査方法を用意しており、また下剤を直接胃に注入する手段も選択肢としてご用意していますので、下剤にご不安のある方も一度ご相談いただければと思います。

 

まとめ

いぼ痔をはじめ、痔があったとしても大腸カメラ検査は受けられます。恥ずかしい、痛いなど事情はあると思いますが、検査をおこなって大腸の病気を早期発見することが大切です。

嵌頓痔核になっているなど、痔の状態によっては、大腸カメラ検査の前に痔の治療をおこなうこともあります。当クリニックは、大腸カメラ検査も痔の治療も力を入れていますので、お気軽にご相談ください。