健康診断で「便潜血陽性」と言われたとき、多くの方が「えっ、大腸がん?」と不安に感じるかもしれません。でも、まず大切なのは落ち着いて正しい情報を知ることです。
便潜血検査は、大腸がんをはじめとする消化管の異常を早期に見つけるための大切なスクリーニング検査です。
この検査で陽性になった場合には、次のステップとして「大腸内視鏡検査」を受けることが推奨されています。
このブログでは、便潜血検査の仕組みから、大腸内視鏡検査がなぜ必要なのか、実際の検査の流れまでをわかりやすく解説します。
怖がらず、そして先延ばしにせず、早期発見・早期治療の第一歩を踏み出すためにぜひ参考にしてください。
1. 便潜血検査とは?目的と仕組みを知ろう
便潜血検査は、便の中に肉眼では見えない微量な血液が含まれていないかを調べる検査です。
主に大腸がんやポリープ、炎症性の病気などの発見を目的としたスクリーニング検査として、健康診断などで広く行われています。
一般的には「2日法」といって、2日分の便を採取し、専用の検査キットで調べる方法が推奨されています。これにより、より精度の高い結果が得られます。
ただし、この検査で陽性になったからといって、すぐに「がんがある」と決まるわけではありません。痔やポリープなどの良性疾患でも陽性になることがあります。
一方で、陰性だからといって絶対に安心というわけでもありません。
大腸がんは初期には症状が出ないことが多く、便潜血検査が唯一の手がかりになるケースもあるのです。
2. 便潜血「陽性」と言われたらどうする?次にすべきこと
便潜血検査で「陽性」と出たとき、不安になる気持ちは当然です。でも、そこで大切なのは「放置せず、次の検査に進む」こと。
陽性=がんではなく、「便に血液が混ざっている可能性がある」というサインです。
その原因を正確に調べるためには、**大腸内視鏡検査(いわゆる大腸カメラ)**を受ける必要があります。
中には「きっと痔のせいだから大丈夫」と自己判断してしまう方もいますが、痔と大腸がんが同時に存在するケースもあるため、安易な判断は禁物です。
実際、陽性と診断された方の中から、ポリープや初期の大腸がんが見つかることも多く、早期発見・早期治療に直結する非常に重要な機会でもあります。
3. なぜ大腸内視鏡検査が必要なのか?
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡(カメラ付きの細い管)を挿入し、大腸全体の粘膜を直接観察できる検査です。
この検査の最大の特徴は、「検査しながらその場で処置もできる」という点です。
大腸がんの多くは、最初は「腺腫性ポリープ」と呼ばれる良性の腫瘍から始まります。
これを早期の段階で内視鏡で発見・切除することで、がんへの進行を防ぐことが可能です。
また、痔や腸炎といった良性疾患との鑑別も内視鏡検査で正確に行えます。レントゲンやCTでは見つけにくい小さな病変も、内視鏡なら見逃しにくいのです。
検査時には希望により鎮静剤を使用することができ、眠っている間に検査が終わったという方も多く、以前よりも負担はかなり軽くなっています。
4. 大腸内視鏡検査の流れと注意点
検査はほとんどの医療機関で日帰りで受けることが可能です。
まず3日前からの準備として、腸を空っぽにするための「下剤」を服用します。
この前処置は、小さな病変までしっかり見つけるためにとても重要なステップです。
検査当日は、鎮静剤の有無を相談し、静脈注射で眠っている間に検査が行われることもあります。
検査時間はおよそ15~20分程度で終了し、その後は安静にして結果説明を受けます。
ポリープ切除が行われた場合には、当日から数日間の食事制限や激しい運動の制限があります。鎮静剤を使った場合は、当日の車やバイク・自転車の運転は禁止されています。
医師やスタッフが丁寧に説明してくれるので、不安があれば遠慮なく相談しましょう。
実際に検査を受けた方からは、「思っていたよりも楽だった」という感想が多く聞かれます。
5. 早期発見・早期治療が未来を変える
大腸がんは早期のうちに発見できれば、治療によって高い確率で完治が期待できる病気です。
そのためには、「自覚症状がないうちに検査を受ける」ことが非常に重要です。
便潜血陽性という結果は、身体からの大切なサインです。
この段階で大腸内視鏡検査を受けておくことで、無症状のうちにがんやポリープを見つけ、治療につなげることができます。
さらに、定期的に内視鏡検査を受けていれば、ポリープの早期発見・切除によって**「将来のがんリスクを減らす」ことも可能**です。これはまさに、予防医療の代表的な取り組みといえます。
まとめ
\ 便潜血陽性は「受けるべきサイン」。検査を迷わず受けましょう /
便潜血検査で陽性が出た場合、それは体からの「何か異常があるかもしれない」というサインです。
すぐにがんが確定するわけではありませんが、原因を明らかにするには大腸内視鏡検査が不可欠です。
不安に感じる方も多いですが、近年の医療技術は大きく進歩しており、痛みや不快感を最小限に抑えた検査が可能になっています。
「自分の体を守るため」「家族のため」にも、ぜひこの機会に検査を受ける決断をしてみてください。
迷ったときは、専門医に相談するところから始めてみましょう。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。