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2025.08.24

便はどうやって作られる?胃・小腸・大腸の連携プレー

「便って、ただ食べたものの残りカスが出てくるだけでしょ?」

そう思っていませんか?実は、私たちが毎日当たり前のように排出している便は、胃・小腸・大腸・神経・筋肉が連携しながら、何十時間もかけて作られています。

食べ物が口に入ってから便になるまでには24〜72時間かかることもあり、その間に栄養の吸収、水分の調整、腸内細菌との共同作業など、見えないドラマが繰り広げられています。

今回は、便ができるまでの流れと健康チェックのポイント、そして毎日の快便を目指すための生活習慣まで、わかりやすく解説します。


1. 口から大腸まで!便ができるまでの道のり

  1. 【口・胃での準備】

    • ・ 食べ物は噛み砕かれ、唾液で湿らされて胃へ

    • ⇒ 胃酸や消化酵素で粥状になり、小腸へ送られます

  2. 【小腸での吸収(約7時間)】

    • ・ 栄養と水分の大半(約7L分)を吸収

    • ⇒ 残った食物繊維や不要成分が大腸へ移動

  3. 【大腸での仕上げ】

    • ・ 水分と電解質をさらに吸収

    • ⇒ 腸内細菌が食物繊維などを分解し、一部は短鎖脂肪酸となって腸のエネルギー源に

    • ⇒ 上行結腸で液体状 → 横行結腸で半固形 → 下行結腸で固形化

    • ⇒ 最後に直腸へ送られ、便として貯留

この過程で、最初は約9Lの液体だった内容物が、最終的には100〜200gの便になります。


2. 大腸での水分吸収と便の硬さの関係

  • ・大腸での通過時間が長い → 水分が吸収されすぎて硬くなり便秘気味に

  • ・通過時間が短い → 水分が多く残り、下痢状に

水分量・食物繊維の摂取量・腸の動き・ストレスなど、さまざまな要因が便の形状に影響します。

便の性状は腸内環境のバロメーター。普段から観察する習慣をつけることが大切です。


3. 排便のしくみと体の連携プレー

便が直腸に到達すると、脳へ「便意」の信号が送られます(排便反射)。

特に朝食後や起床時に活発になるのは、胃や小腸が動く刺激で大腸も動くからです。

排便には以下の連携が不可欠です。

  • ・ぜん動運動:大腸の筋肉が便を押し出す

  • ・腹筋・横隔膜の力:ふんばりをサポート

  • ・内・外肛門括約筋の調節:便を出すタイミングをコントロール

  • ・正しい姿勢:前かがみで骨盤底筋が緩み、スムーズに排出

この連携が崩れると便秘や便失禁の原因になります。


4. 正常な便を見分ける「ブリストルスケール」

ブリストルスケールは、便を7タイプに分類する指標です。

  • ・タイプ3〜4:理想(ソーセージ状でひび割れ or 滑らか)

  • ・タイプ1〜2:硬い(便秘や水分不足のサイン)

  • ・タイプ5〜7:柔らかい(下痢や腸の動きすぎ)

色(茶〜黄土色)、におい、排便回数(1日1回〜週3回)も健康チェックの目安になります。


5. 健康な便をつくる生活習慣

  • ・水分をしっかり摂る(1.5〜2L/日)

  • ・食物繊維を適量摂取(野菜・海藻・きのこ・豆類)

  • ・発酵食品で腸内環境を整える(ヨーグルト・納豆・キムチ)

  • ・規則正しい生活(朝食後の排便習慣づくり)

  • ・適度な運動(ウォーキング・腹筋運動)


まとめ

便ができるまでには、胃・小腸・大腸・神経・筋肉の複雑な連携が関わっています。

便の形や硬さは、腸の健康状態を映す大切なサイン。日々の食事・水分・運動・排便習慣を見直すことで、健康な便を維持できます。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、排便や腸の健康に関する診察・生活指導を行っています。便や腸内環境に不安がある方は、お気軽にご相談ください。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。