「ピロリ菌って胃の病気の原因でしょ?」――多くの人がそう思っています。しかし最新の研究では、ピロリ菌の影響は胃の中だけにとどまらないことがわかってきました。
胃潰瘍や胃がん、慢性胃炎はもちろん、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹、生活習慣病、さらにはアレルギー症状との関連まで報告されているのです。
この記事では、ピロリ菌の基礎知識から感染経路、胃以外への影響、検査・治療法、そして日常でできる予防策まで、専門医の視点でわかりやすく解説します。早期発見と除菌で守れる健康があります。
1. ピロリ菌ってどんな菌?──感染ルートと基本情報
ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に長期間棲みつく細菌です。
感染の多くは幼少期に起こり、親の唾液や食器の共有など“口”を介して広がります。特に40代以上の世代では感染率が高く、日本では依然として大きな健康リスクの一つです。
一度胃に定着すると、強酸の胃液にも耐えて生き延び、慢性的な炎症を引き起こします。これが長年続くと胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発症率が高まり、さらに胃がんの発生リスクも跳ね上がります。
2. 胃に限らない!ピロリ菌が引き起こす意外な合併症
ピロリ菌の影響は胃の病気にとどまりません。近年の研究では、次のような全身への悪影響が明らかになっています。
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鉄欠乏性貧血:胃の炎症により鉄の吸収が阻害され、慢性的な貧血につながる。
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慢性蕁麻疹・アレルギー症状の悪化:免疫バランスの乱れが皮膚や呼吸器に影響。
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生活習慣病リスクの増加:感染者では高血圧やインスリン抵抗性が高まる可能性あり。
実際、除菌治療後に貧血や皮膚症状が改善した例も報告されており、ピロリ菌は「胃の中の問題」では済まないことがわかります。
3. ピロリ菌の検査と治療──安心へのステップ
疑わしい場合は、早めの検査が重要です。主な検査方法は以下の通り。
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尿素呼気試験:息を吹き込むだけで判定可能。精度も高く負担が少ない。
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抗体検査(血液・尿・便)
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胃カメラ検査:必要に応じて直接観察と組織採取。
治療は「胃酸抑制薬+抗菌薬2種」を1週間程度服用する除菌療法が標準。保険適用で成功率は70〜90%に達し、副作用も軽度で一時的です。
4. 日常生活でできるピロリ菌対策
予防の基本は「感染経路を断つ」こと。
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・食器や箸は洗浄・煮沸し、共有を避ける。
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・加熱不十分な生ものは避ける。
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・定期的に胃の検査を受ける。
また、胃の粘膜を守るために、暴飲暴食を避け、バランスの良い食事・十分な睡眠・ストレス管理を心がけましょう。
5. まとめ──「早く知る」ことが最大の予防
ピロリ菌は胃の病気だけでなく、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性がある細菌です。
感染が疑われる場合や胃の不調が続く場合は、早めの検査と除菌治療が大切です。
大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、ピロリ菌の検査から治療、再感染防止の生活指導まで一貫してサポートしています。「もしかして…」と思ったら、ためらわず相談してください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。