「一日の終わりにお酒を飲むのが楽しみ」「週末は友人と飲み会で盛り上がる」――そんな生活スタイルの方も多いのではないでしょうか。
適度な飲酒はストレスを和らげ、気分をリラックスさせる効果があります。しかし一方で、腸内細菌にとってはアルコールは刺激となり、腸内環境を乱す原因になることがあるのです。
腸内環境が崩れると、便秘や下痢、肌荒れ、免疫力の低下など、全身にさまざまな影響が現れます。
本記事では、アルコールと腸内細菌の関係、注意すべきサイン、そして腸を守る生活習慣について、医学的視点から分かりやすく解説します。
1. 腸内細菌とは?私たちを支える「もう一つの臓器」
腸内には、数百~数千種類・約100兆個以上もの腸内細菌が存在し、その総重量はなんと1.5kgにもなるといわれます。
これらは「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれ、健康に大きな役割を果たしています。
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・善玉菌:消化吸収の補助、ビタミン合成、免疫強化など
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・悪玉菌:有害ガスや毒素を産生し、便秘・肌荒れ・疲労の原因に
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・日和見菌:優勢な菌の影響を受けやすい中立的な存在
このバランスが整っていると腸も体も健やかに保たれますが、崩れると不調が一気に表面化します。
ここで注目すべきが「アルコールの影響」です。
2. アルコールが腸内細菌に与える影響
アルコールは肝臓で分解されるだけでなく、腸内にも大きな影響を及ぼします。
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「善玉菌の減少と悪玉菌の増加」
アルコールや代謝産物のアセトアルデヒドは腸粘膜を傷つけ、善玉菌の環境を悪化させます。その結果、悪玉菌が優勢になりやすくなります。 -
「腸のバリア機能の低下(リーキーガット)」
腸粘膜が荒れると「腸のすき間」が広がり、未消化物質や毒素が血液中に侵入。慢性炎症や免疫異常を引き起こすことがあります。 -
「便通異常(下痢・便秘)」
飲酒後に下痢やお腹の張りを感じるのは、腸内細菌のバランス乱れが一因です。 -
「肝臓への二次的負担」
腸内で発生した毒素は門脈を通じて肝臓へ。腸環境が悪化すると肝臓の負担も増え、肝機能障害のリスクにつながります。
3. 飲酒と付き合うための腸活習慣
お酒を完全にやめる必要はありませんが、腸を守る工夫が欠かせません。
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・発酵食品を摂る(納豆・ヨーグルト・キムチなど)
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・食物繊維を意識(野菜・豆類・海藻・きのこなど)
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・飲酒量をコントロール(週2日の休肝日、ビールは350ml程度まで)
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・水分補給を忘れない(アルコールと同量以上の水を摂取)
こうした習慣を心がけるだけで、腸内環境は大きく変わります。
4. 注意すべき体のサインと受診の目安
腸内環境の乱れは、次のような症状として現れます。
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・慢性的な下痢や便秘
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・お腹の張り・ガスの増加
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・肌荒れ・ニキビの悪化
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・疲れやすさ、風邪をひきやすい
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・飲酒後の腹痛
これらが続く場合、腸内細菌のバランスが崩れている可能性があります。長引く症状は自己判断せず、専門医に相談しましょう。
まとめ
アルコールは生活に彩りを与える一方で、腸内細菌には負担となり、腸内環境の悪化を引き起こします。
善玉菌を守り、腸の健康を意識することが、体全体の健康維持につながります。
腸の不調を感じたら放置せず、検査や相談を受けることが大切です。
腸を整えつつ、無理のない範囲でお酒を楽しむことが、健康的なライフスタイルへの第一歩です。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。