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2025.08.31

晩酌習慣が腸に及ぼすリスクと今日からできる対策

「一日の終わりにお酒を飲むのが楽しみ」「週末は友人と飲み会で盛り上がる」――そんな生活スタイルの方も多いのではないでしょうか。

適度な飲酒はストレスを和らげ、気分をリラックスさせる効果があります。しかし一方で、腸内細菌にとってはアルコールは刺激となり、腸内環境を乱す原因になることがあるのです。

腸内環境が崩れると、便秘や下痢、肌荒れ、免疫力の低下など、全身にさまざまな影響が現れます。

本記事では、アルコールと腸内細菌の関係、注意すべきサイン、そして腸を守る生活習慣について、医学的視点から分かりやすく解説します。


1. 腸内細菌とは?私たちを支える「もう一つの臓器」

腸内には、数百~数千種類・約100兆個以上もの腸内細菌が存在し、その総重量はなんと1.5kgにもなるといわれます。

これらは「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれ、健康に大きな役割を果たしています。

  • ・善玉菌:消化吸収の補助、ビタミン合成、免疫強化など

  • ・悪玉菌:有害ガスや毒素を産生し、便秘・肌荒れ・疲労の原因に

  • ・日和見菌:優勢な菌の影響を受けやすい中立的な存在

このバランスが整っていると腸も体も健やかに保たれますが、崩れると不調が一気に表面化します。

ここで注目すべきが「アルコールの影響」です。


2. アルコールが腸内細菌に与える影響

アルコールは肝臓で分解されるだけでなく、腸内にも大きな影響を及ぼします。

  1. 「善玉菌の減少と悪玉菌の増加」

    アルコールや代謝産物のアセトアルデヒドは腸粘膜を傷つけ、善玉菌の環境を悪化させます。その結果、悪玉菌が優勢になりやすくなります。

  2. 「腸のバリア機能の低下(リーキーガット)」

    腸粘膜が荒れると「腸のすき間」が広がり、未消化物質や毒素が血液中に侵入。慢性炎症や免疫異常を引き起こすことがあります。

  3. 「便通異常(下痢・便秘)」

    飲酒後に下痢やお腹の張りを感じるのは、腸内細菌のバランス乱れが一因です。

  4. 「肝臓への二次的負担」

    腸内で発生した毒素は門脈を通じて肝臓へ。腸環境が悪化すると肝臓の負担も増え、肝機能障害のリスクにつながります。


3. 飲酒と付き合うための腸活習慣

お酒を完全にやめる必要はありませんが、腸を守る工夫が欠かせません。

  • ・発酵食品を摂る(納豆・ヨーグルト・キムチなど)

  • ・食物繊維を意識(野菜・豆類・海藻・きのこなど)

  • ・飲酒量をコントロール(週2日の休肝日、ビールは350ml程度まで)

  • ・水分補給を忘れない(アルコールと同量以上の水を摂取)

こうした習慣を心がけるだけで、腸内環境は大きく変わります。


4. 注意すべき体のサインと受診の目安

腸内環境の乱れは、次のような症状として現れます。

  • 慢性的な下痢や便秘

  • お腹の張り・ガスの増加

  • 肌荒れ・ニキビの悪化

  • 疲れやすさ、風邪をひきやすい

  • 飲酒後の腹痛

これらが続く場合、腸内細菌のバランスが崩れている可能性があります。長引く症状は自己判断せず、専門医に相談しましょう。


まとめ

アルコールは生活に彩りを与える一方で、腸内細菌には負担となり、腸内環境の悪化を引き起こします。

善玉菌を守り、腸の健康を意識することが、体全体の健康維持につながります。

腸の不調を感じたら放置せず、検査や相談を受けることが大切です。

腸を整えつつ、無理のない範囲でお酒を楽しむことが、健康的なライフスタイルへの第一歩です。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。