便の異変や腹痛、血便…。そんなとき「もしかして潰瘍性大腸炎?」と不安になる方も少なくありません。
潰瘍性大腸炎は、比較的若い世代にも多く見られる慢性疾患で、日本では指定難病に認定されています。しかし、医療が進歩した現在では、適切な治療と生活の工夫で安定した日常を送ることが可能です。
ここでは「潰瘍性大腸炎の基礎知識」「症状や診断の流れ」「最新の治療法」「日常生活での注意点」について、わかりやすくご紹介します。
1. 潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍が起こる「炎症性腸疾患(IBD)」のひとつです。直腸から始まり、大腸全体に広がるケースもあります。患者数は年々増加傾向にあり、特に10代後半から30代での発症が多いことが特徴です。男女差はあまりなく、軽症から重症まで症状の出方には個人差があります。
原因は明確に解明されていませんが、免疫機能の異常や遺伝的要因、腸内環境の乱れ、食生活やストレスなど複数の要素が関与すると考えられています。
病気は「再燃(悪化)」と「寛解(落ち着いた状態)」を繰り返すため、治療の目標は炎症を抑えるだけでなく、寛解を長く維持することにあります。
2. 主な症状と病気の経過
潰瘍性大腸炎の典型的な症状は以下の通りです。
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・血便(鮮血が混じる、粘液を伴うことも)
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・下痢、腹痛、しぶり腹(便意があるのに出にくい状態)
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・発熱、体重減少、貧血、倦怠感などの全身症状
病気の経過は波のように変動し、症状が落ち着く「寛解期」と、再び症状が強まる「再燃期」を繰り返します。
人によって数年単位で安定する場合もあれば、数か月ごとに再燃するケースもあります。
また、皮膚炎・関節炎・眼の炎症など腸以外に症状が出ることもあり、全身管理が必要です。
3. 診断方法と検査の流れ
潰瘍性大腸炎を診断するためには、以下のような手順を踏みます。
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・問診 … 症状の出方や経過を詳しく確認
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・血液検査・便検査 … 感染症の有無、炎症マーカー(CRP)、貧血の有無などを調べる
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・大腸内視鏡検査 … 粘膜の状態を直接観察し、組織を採取して顕微鏡で確認
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・画像検査(CT・MRI・超音波) … 合併症の有無や炎症の範囲を確認
潰瘍性大腸炎は、感染性腸炎やクローン病、大腸がんなどと症状が似ているため、慎重に診断を進める必要があります。大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、専門医による内視鏡検査を含め、総合的に診断を行っています。
4. 治療法:薬物・食事・手術の選択肢
潰瘍性大腸炎の治療は「症状を抑える」だけでなく「寛解を維持する」ことを目的に行われます。
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薬物療法
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・軽症:5-ASA製剤(内服・坐薬・注腸)
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・中等症以上:ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤(抗TNF-α抗体など)、JAK阻害薬
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・その他:白血球除去療法(LCAP)
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手術療法
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薬でコントロールできない重症例では、大腸全摘手術を行うこともありますが、薬物療法の進歩により頻度は減少しています。
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治療は段階的に進められ、一人ひとりの症状や生活に合わせたオーダーメイドの管理が必要です。
5. 日常生活の注意点とセルフケア
潰瘍性大腸炎の患者さんが安定した生活を送るためには、以下の工夫が大切です。
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・食事 … 消化にやさしい食材を選び、脂っこい料理や刺激物、アルコールは控えめに
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・寛解期と活動期の工夫 … 活動期は食物繊維を減らし、寛解期には少しずつ通常食に戻す
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・ストレス管理 … 睡眠・運動・趣味の時間を大切にし、心身をリラックスさせる
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・通院・服薬の継続 … 自己判断で薬を中断せず、医師の指示に従うことが重要
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・定期検査 … 発症から長期経過している方は、大腸がんのリスクを考慮して定期的な内視鏡検査を受ける
まとめ
潰瘍性大腸炎は、慢性疾患ではあるものの、適切な治療とセルフケアで安定した生活を送れる病気です。
症状が波のように変動するため、早期診断と定期的なフォローアップが大切です。大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、消化器専門医が一人ひとりに合わせた診療を行っています。
気になる症状があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。