「胃が痛い」「食欲が落ちてきた」「なんとなく体調がすぐれない」――そんな症状の裏に、ピロリ菌が関わっている可能性があります。
ピロリ菌といえば「胃潰瘍」や「胃がん」といった病気を連想しがちですが、近年の研究では貧血・アレルギー・生活習慣病との関連性も指摘され、全身にさまざまな影響を及ぼすことが分かってきました。
この記事では、ピロリ菌の正体や感染経路、胃以外の病気への関与、検査・除菌治療の流れ、放置した場合のリスク、そして日常生活でできる予防法までを詳しく解説します。
1. ピロリ菌とは?── 正体と感染ルート
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃酸という過酷な環境でも生き残ることができる、らせん状の細菌です。胃の粘膜に住みつき、慢性的な炎症を引き起こします。
感染経路の多くは子どもの頃の生活習慣に関係しています。
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・親から子への口移しや食器の共有
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・不衛生な水や食べ物(特に幼少期の環境)
日本では40代以上の世代で感染率が高く、60代以上では8割以上が感染歴ありというデータもあります。
2. 胃だけじゃない!ピロリ菌が引き起こす病気
ピロリ菌が原因となる病気は消化器だけにとどまりません。
消化器疾患
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・慢性胃炎(症状がなくても進行)
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・胃潰瘍、十二指腸潰瘍
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・胃がん(感染者の1〜3%にリスク)
全身への影響
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・鉄欠乏性貧血:炎症による鉄吸収の低下
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・アレルギー悪化・慢性蕁麻疹:免疫機能の乱れとの関連
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・高血圧や糖代謝異常:生活習慣病リスクの上昇
実際に、除菌治療によって貧血や皮膚症状が改善した例も報告されています。
3. ピロリ菌感染のサイン
初期の段階では自覚症状がほとんどないため、気づかず放置してしまうことも少なくありません。しかし、以下のような症状がある場合は要注意です。
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・胃もたれや胸やけ、吐き気
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・食欲不振や体重減少
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・黒っぽい便(タール便)
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・貧血と診断された
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・みぞおちの痛み
これらが続く場合は、胃内視鏡検査や呼気検査などを受けることをおすすめします。
4. 除菌治療の流れと副作用
ピロリ菌陽性と診断されたら、保険適用で除菌治療が可能です。
治療の流れは以下の通りです。
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①1週間の服薬(抗菌薬2種類+胃酸抑制剤)
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②服用から約2か月後に判定検査
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💡成功率は1次除菌で約70〜85%、2次除菌まで含めると約95%
副作用として下痢や味覚の違和感が出る場合がありますが、ほとんどは一過性で、重度になることは稀です。
5. 放置するとどうなる?
ピロリ菌を放置すると、次のようなリスクが高まります。
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萎縮性胃炎:胃粘膜が薄くなり、胃がんの前段階に
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潰瘍:出血や穿孔の危険
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胃がん:長期感染者は特にリスクが高い
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免疫疾患:血小板減少など全身に影響が及ぶことも
特に「黒色便」「急激な体重減少」「みぞおちの激痛」などが出た場合は、早急に受診が必要です。
6. 再感染予防と日常生活の工夫
除菌後の再感染はまれですが、生活習慣を整えることでリスクをさらに減らせます。
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衛生管理:食器の共有を避ける、手洗いを徹底
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定期検査:除菌後も年1回の胃カメラでフォローアップ
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生活習慣の改善:禁煙・節酒、バランスの良い食事、ストレスケア
こうした取り組みは、胃を守るだけでなく全身の健康維持にもつながります。
まとめ:まずは検査から
ピロリ菌は「ただの胃の菌」ではなく、胃がん・貧血・アレルギー・生活習慣病など全身に関わる“見えないリスク”です。
感染がわかれば、検査・除菌治療・再発予防まで一貫した対応が可能です。大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、胃内視鏡検査から除菌判定までサポート体制を整えています。
「なんとなく胃の調子が悪い」「ピロリ菌が気になる」という方は、放置せず早めにご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。