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2025.10.03

冬に多いノロウイルス食中毒|牡蠣好きが知っておくべきリスクと予防法

寒さが深まると、あったかい鍋や新鮮な海の幸が恋しくなりますよね。中でも「牡蠣」は冬の味覚の代表格。ぷりっとした食感と濃厚な旨味は、まさに冬のごちそうです。

しかし注意したいのが「ノロウイルス」。冬になると急増する食中毒の原因のひとつに牡蠣が挙げられています。牡蠣を安心して楽しむには、ノロウイルスの特徴や正しい調理法、感染時の対応を知っておくことが大切です。


1. 冬に多発!牡蠣とノロウイルスの実態

ノロウイルスは、毎年11月~3月にかけて流行する感染性胃腸炎の原因ウイルスです。

特に牡蠣をはじめとする二枚貝は感染源として有名です。牡蠣は海水をろ過して栄養を取り込むため、ウイルスを含んだ海で育つと体内にノロウイルスを蓄積してしまいます。

生や加熱不十分の状態で食べると、わずかなウイルスでも感染を起こす可能性があります。

実際、冬場になると「牡蠣を食べた後に嘔吐や下痢が止まらない」という患者さんが多く受診されます。症状は突然の吐き気、激しい下痢、腹痛、高熱などで、小さな子どもや高齢者では重症化する危険もあるため油断できません。


2. ノロウイルスの特徴と牡蠣のリスク

ノロウイルスには次のような性質があります。

  • 感染力が非常に強い(数個でも感染する)

  • アルコール消毒では死滅しにくい

  • 低温や乾燥に強く、冬に流行しやすい

牡蠣を見た目や匂いで判断しても、ウイルスの有無はわかりません。たとえ「生食用」と表示されていても、感染例は存在します。

さらに表面を軽く加熱した程度では不十分で、中心温度90℃以上で90秒以上の加熱が必要とされています。また、感染者が調理に関わることで、調理器具や手指を介して二次感染が広がることもあります。


3. 安全に牡蠣を楽しむための調理と食べ方

「牡蠣は危険だから食べない方がいいの?」と思う方もいますが、正しい調理をすれば安全に美味しく味わえます。

  • しっかり加熱する:中心まで火を通し、90℃で90秒以上を目安に。鍋やフライパンでは見た目だけでなく加熱時間を意識しましょう。

  • 調理器具・手指の衛生管理:使用後のまな板や包丁は熱湯や塩素系漂白剤で消毒を。調理前後の丁寧な手洗いも必須です。

  • 保存に注意:牡蠣は5℃以下で保存し、調理後は早めに食べる。再加熱する際も中心まで十分に加熱します。

  • リスクが高い人は生食を避ける:乳幼児・高齢者・妊娠中の方・免疫が低下している方は特に注意しましょう。


4. 感染が疑われたときの対処法と受診の目安

もし牡蠣を食べた後に嘔吐や下痢、腹痛が出たらノロウイルスの可能性があります。

基本的な対処は次のとおりです。

  • ・水分補給を最優先(経口補水液やスポーツドリンクがおすすめ)

  • ・食欲がないときは無理に食べず胃腸を休める

  • ・下痢止めは自己判断で使わず、医師の指示を受ける

  • ・吐しゃ物や便の処理は手袋・マスクを着け、処理後は漂白剤で消毒

受診が必要なサインには以下があります。

  • ・水分が取れず脱水が進んでいる

  • ・嘔吐や下痢が長引く

  • ・血便や強い腹痛がある

  • ・意識がもうろうとしている

こうした場合はすぐに医療機関を受診してください。


5. まとめ|正しい知識で牡蠣を楽しもう

牡蠣は冬の味覚として魅力的ですが、ノロウイルスのリスクも伴います。

大切なのは「危険だから食べない」ではなく、正しい知識と調理法で安全に楽しむことです。十分な加熱、衛生管理、そして体調に不安があるときは無理をしないことが大切です。

冬の味覚を安心して楽しむために、ぜひ今日からできる予防を意識してみましょう。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。