ブログ

2025.10.08

痔に市販薬は有効?正しい使い方と医療機関に相談すべきサイン

「お尻がヒリヒリ痛い」「トイレットペーパーに血がついてびっくりした」──そんな経験をしたことがある人は少なくありません。痔は日本人の約3人に1人が一度は悩むといわれる、とても身近な病気です。

最近ではドラッグストアやネット通販で数多くの市販薬が販売されており、「とりあえず市販薬で治してみようかな」と考える方も多いでしょう。確かに市販薬には、痛みやかゆみを抑えたり、炎症や出血を軽減したりする有効成分が含まれています。軽度の痔であれば症状が和らぎ、生活がぐっと楽になることもあります。

しかし「市販薬で治る」という言葉には注意が必要です。実際には、痔の種類や進行度によっては市販薬だけでは改善しない場合も少なくありません。この記事では、痔に使う市販薬の効果と限界、使用時の注意点、そして受診を検討すべきサインについて、大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックの視点も交えて詳しく解説します。


1. 市販薬に含まれる主な成分とその働き

市販薬の多くは「対症療法」を目的としており、症状を和らげる効果が期待できます。代表的な成分には次のようなものがあります。

  • ・血行・炎症を改善する成分

     ヘパリン類似物質やステロイド(ヒドロコルチゾンなど)は、炎症や腫れを抑え、出血を軽減します。

  • ・鎮痛・かゆみ止め成分

     リドカインなどの局所麻酔や、メントール・カンフルが痛みやかゆみを和らげます。

  • ・止血・収れん成分

     タンニン酸やアルミニウム塩が、出血を止める働きを持ちます。

  • ・保護・保湿成分

     患部をやさしく覆い、便や摩擦による刺激から守ります。

  • ・漢方薬・生薬成分

     乙字湯などは炎症を抑え、血流を改善する効果が期待されます。

これらの作用によって「痛みがやわらぐ」「出血が減る」といった改善がみられることがあります。


2. 市販薬で改善しやすいケースと難しいケース

改善しやすいケース
  • ・内痔核の初期(出血が少ない・脱出が軽い)

  • ・裂肛(切れ痔)で、主に痛みが中心

  • ・発症から間もない軽度の症状

  • ・便秘や生活習慣の改善をあわせて行える場合

改善が難しいケース
  • ・内痔核が大きく、肛門の外に出て戻らない場合

  • ・出血が多く、貧血の心配がある場合

  • ・強い痛み・腫れ・発熱を伴う場合

  • ・数週間〜数か月使っても改善がない場合

  • ・痔ろうや大腸がんなど、別の病気の可能性がある場合

こうしたケースでは、市販薬だけでの改善は難しく、早めに専門医による治療が必要になります。


3. 市販薬を使うときの注意点

  • 薬の選び方を間違えないこと:ステロイド入りか、鎮痛成分入りか、自分の症状に合ったものを選ぶ。

  • 用法・用量を守ること:過度な使用は副作用のリスクにつながります。

  • 患部を清潔に保つこと:やさしく洗い、保湿して摩擦を避けましょう。

  • 便通を整えること:水分・食物繊維をしっかり摂り、便秘や硬便を防ぐ。

  • 生活習慣を見直すこと:長時間の座位や重い荷物、冷えを避ける。


4. 改善しない・悪化したときは受診を

市販薬を使っても数日〜1週間で改善が見られない場合、あるいは出血が多い・痛みが強い・脱出が戻らないといった症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。

特に、

  • 出血が頻繁・多量

  • 歩行が困難なほどの痛みや腫れ

  • 症状が数週間以上続く

  • といった場合は、放置せず早めの診断が重要です。


5. 大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでの対応

当院では「まず市販薬を試したい」という方にも、丁寧な診察を行い、痔の種類や進行度を見極めます。

そのうえで、市販薬で様子を見るべきか、注射・手術などの専門治療が必要かを判断します。

「市販薬を試したけど治らない」「出血が続いて不安」という場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

早めの受診で治療がシンプルに済むケースも多くあります。


まとめ

市販薬は軽度の痔に対しては有効な手段ですが、すべてのケースで「完治」を期待できるわけではありません。症状が強い、長引く、悪化している場合は専門的な治療が必要です。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、市販薬でのセルフケアから専門治療まで幅広く対応し、安心して相談できる体制を整えています。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

  1. ・Yamana, T., Japanese Practice Guidelines for Anal Disorders I. Hemorrhoids. Journal of Anus, Rectum and Colon. 2017; 1(3): 89‑99. PMC
  2. ・Hachiro Y., Kunimoto M., Abe T., Ebisawa Y., Aluminum potassium sulfate and tannic acid (ALTA) injection as the mainstay of treatment for internal hemorrhoids. Surg Today. 2011;41(6):806‑809. PMC
  3. ・“Recurrence Rates and Pharmacological Treatment for Hemorrhoidal Disease: A Systematic Review.” J‑GLOBAL. 2023.