毎年のように流行するインフルエンザ。
「注射が怖い」「子どもが泣いてしまう」——そんな声は毎年、予防接種の季節になると多く聞かれます。
そんな方に朗報です。**注射なしで、鼻から吸うだけで接種できるインフルエンザワクチン「フルミスト」**が日本でも使えるようになりました。
「普通の注射ワクチンと何が違うの?」「本当に効果があるの?」と気になる方も多いはず。
この記事では、従来型のインフルエンザワクチンとの違い、効果や安全性、注意点までをわかりやすく解説します。
フルミストとは?従来ワクチンとの違い
インフルエンザワクチンには大きく分けて2種類あります。
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・注射タイプ(不活化ワクチン)
→ 日本で長年使われてきた一般的なタイプ。ウイルスの一部を使い、血液中に抗体を作ることで発症を防ぎます。 -
・経鼻スプレータイプ(フルミスト)
→ 鼻にスプレーして吸入する「生ワクチン」。ウイルスを弱めた状態で体内に取り込み、鼻や喉の粘膜に「IgA抗体」を作り出します。
これにより、ウイルスが最初に侵入する“呼吸器の入り口”でブロックできるのが大きな特徴です。
とくに2〜7歳の小児では予防効果が高いと報告されており、欧米ではすでに広く普及しています。
ただし、鼻炎や副鼻腔炎がひどい場合は吸入しにくく、効果が出にくいこともあります。
フルミストのメリットとデメリット
メリット
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💡 痛くない!注射不要でストレス軽減
小さなお子さんや注射嫌いな方にとって、大きなメリットです。 -
💡 自然に近い免疫のつき方
フルミストは粘膜免疫を強化し、感染そのものをブロックします。 -
💡 1回の接種でOK(13歳未満も)
従来の注射では2回必要な子どもも、フルミストは1回で済むケースが多くなります。
デメリット
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・喘息のある子どもには使用できない場合があります。
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・妊娠中・授乳中の方は避けたほうがよいとされています。
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・接種後は免疫の弱い人との接触を控える必要があります(生ワクチンのため)。
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**費用がやや高め(約9,000〜10,000円)**で、保険適用外です。
※自治体によっては助成があることもありますので、確認しておきましょう。
どんな人に向いている?接種対象と注意点
フルミストはすべての人に適しているわけではありません。以下の条件に該当する方は注意が必要です。
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・喘息や慢性呼吸器疾患のある方
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・妊娠中または授乳中の方
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・免疫力が低下している方
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・ゼラチンアレルギーのある方
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・同居家族に免疫不全の方がいる場合
また、ワクチンには精製ゼラチンが含まれているため、ゼラチンアレルギーがある場合は接種できません。
接種後は1〜2週間、激しい運動やプールを避けることが推奨されています。
鼻づまりがあるときは、医師と相談して時期を調整しましょう。
よくある質問(Q&A)
Q1:生ワクチンって危険じゃないの?
→ フルミストのウイルスは「弱毒化」されており、感染の危険はほとんどありません。海外では長年使用され、安全性も確認されています。
Q2:鼻から吸うタイプでも効果あるの?
→ はい。自然感染に近い形で免疫がつくため、呼吸器の粘膜レベルでしっかり防御できます。
Q3:費用は?保険は使える?
→ 保険適用外で、9,000〜10,000円ほど。自治体の助成制度を確認しましょう。
Q4:注射との併用は必要?
→ 通常はどちらか1種類で十分です。併用の必要はありません。
Q5:風邪気味でも受けられる?
→ 発熱や鼻づまりがある場合は延期を。体調が良いタイミングでの接種が推奨されます。
【まとめ】フルミストは「痛くない」だけじゃない!
フルミストは、注射が苦手な方やお子さんにとって革新的な選択肢です。
鼻から吸うだけで自然な免疫がつき、インフルエンザの感染を防ぐ効果が期待できます。
ただし、生ワクチンのため使用できないケースもあるため、医師と相談して自分に合った予防方法を選ぶことが大切です。
大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、年齢・体質・持病を考慮した上で、最適な接種方法をご提案しています。
お気軽にご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。
【参考文献】
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・Caspard H, et al. “Live-attenuated influenza vaccine effectiveness in children from 2 through 17 years of age: A meta-analysis of randomized controlled trials.” Current Medical Research and Opinion. 2017.
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