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2025.10.10

お尻の出血=痔?放置NGな“軽い血”の正体を専門医が解説

トイレでお尻を拭いたとき、トイレットペーパーにうっすらと血が付いていた…。

そんなとき「ちょっと切れただけかな」「硬い便のせいだろう」と、そのまま放置していませんか?

実はそれ、“痔(じ)”の初期サインかもしれません。

痔は誰にでも起こり得る身近な病気で、初期の段階で気づければ、治療の負担は最小限で済むことが多いです。

逆に、放っておくと出血が増えたり痛みが出たりして、治療が長引くこともあります。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、このような「初期の出血サイン」に早く気づき、正しく対処することの大切さをお伝えしています。

ここでは、「どんな出血なら痔の可能性があるのか」「放置してはいけないサイン」について、詳しく解説していきます。


1. 痔とは?──3つのタイプと原因

痔は、肛門周囲の血管や粘膜に炎症や腫れが生じた状態を指します。主な種類は3つです。

  • ・内痔核(いぼ痔):肛門の内側にできるタイプ。痛みは少なく、排便時の鮮血や脱出感、粘液の分泌などが特徴。

  • ・外痔核:肛門の外側にできるため、強い痛みや腫れを伴うことが多い。しこりのように感じることも。

  • ・裂肛(切れ痔):硬い便や強いいきみで肛門の皮膚が切れる状態。鋭い痛みと少量の出血が特徴。

原因はさまざまで、便秘・下痢・長時間の座位・妊娠出産・いきみなど、肛門への負担がきっかけになることが多いです。

初期段階では「血が少し付く」「違和感がある」など軽い症状にとどまりますが、この段階で治療を始めることが、再発予防にもつながります。


2. 初期出血の特徴──色・タイミング・痛みをチェック!

「どんな血が出たか」をよく観察すると、痔かどうかの目安になります。

【観察ポイント】 【典型的な痔のサイン】
血の色 鮮やかな赤色(トイレットペーパーや便器に付く程度)
出血のタイミング 排便時または直後のみ
痛みの有無 内痔核は痛みなし/裂肛・外痔核は痛みあり

黒っぽい血便や便と混ざった血、タール状の便などは、大腸や胃などの疾患が関係していることもあります。

出血が続く・量が増える場合は、早めに医療機関での確認が必要です。


3. 痔による出血と「他の病気による出血」の見分け方

痔が原因の出血は「鮮血」「少量」「排便時のみ」という特徴がありますが、次のような場合は注意が必要です。

  • ・血が暗赤色・便に混じっている

  • ・出血量が増えている、または断続的に続く

  • ・体重減少・貧血・便の形の変化・腹痛などがある

こうした症状があるときは、大腸ポリープ・大腸がん・炎症性腸疾患などの可能性を否定できません。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、診察時に痔の有無を確認しつつ、必要に応じて大腸内視鏡検査を行い、他の疾患をしっかり除外します。


4. 初期の痔の治療とセルフケア

軽症のうちにケアすれば、手術が不要なケースがほとんどです。

薬物療法
  • ・軟膏・坐剤で炎症を抑え、出血や痛みを軽減

  • ・必要に応じて内服の止血薬・抗炎症薬を併用

生活習慣の見直し
  • ・便秘を防ぐ(食物繊維と水分をしっかり摂る)

  • ・便意を我慢しない・いきみすぎない

  • ・長時間座らない・温かいお風呂で血流促進

ローカルケア
  • ・座浴(ぬるま湯で肛門部を温める)

  • ・排便後は優しく拭き、清潔を保つ

こうしたケアで改善が見られることが多いですが、1週間以上続く出血は医師の診察を受けましょう。


5. 出血が続くときは迷わず受診を

「出血が増えた」「痛みが出てきた」「便の色が変わった」などの変化があれば、放置せず受診を。

特に以下のような場合は、早めに専門医の診察をおすすめします。

  • 出血が1週間以上続く

  • 出血が頻繁・増量している

  • 黒い血やタール状の便が出る

  • 体重減少や貧血、だるさなど全身症状がある

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、出血の原因を丁寧に見極め、患者さま一人ひとりに合わせた治療と再発予防のアドバイスを行っています。


まとめ

「少しの血だから大丈夫」と見過ごしてしまいがちな痔の初期出血。

しかし、早期に気づいて正しく対処すれば、短期間で改善することが多いです。

もし出血が続く、色が違う、痛みがあるといった変化を感じたら、自己判断せず専門医へ。おしりの健康を守る第一歩は、“気づくこと”から始まります。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

  1. ・Randomized clinical trial of micronized flavonoids in the early control of bleeding from acute internal haemorrhoids
    著者:Ho YH, Seow‑Choen F 他 PubMed
    雑誌名:British Journal of Surgery PubMed

  2. ・The efficacy of Aescin combined with MPFF for early control of bleeding from acute hemorrhoids, a randomized controlled trial
    著者:Witcha Vipudhamorn, Suwan Sanmee 他 サイエンスダイレクト+1
    雑誌名:Asian Journal of Surgery サイエンスダイレクト

  3. ・An optimal painless treatment for early hemorrhoids; our experience in Government Medical College and Hospital
    著者:著者不特記(India の医療機関のチーム) PubMed
    雑誌名:International Journal of Surgery or類似の外科学会誌(Outpatient non‑surgical ambulatory study) PubMed