夏の暑さがやわらぎ、秋の風が心地よく感じられる季節になりました。紅葉や栗、そして秋の味覚といえば“キノコ”。自然の中でキノコ狩りを楽しむ方も多いでしょう。
しかし、この季節に毎年ニュースで報じられるのが「毒キノコによる食中毒」です。見た目がそっくりな毒キノコを誤って食べてしまい、重症化するケースも少なくありません。
今回は、秋に多発する毒キノコ中毒の実態や、キノコ狩りの際に守るべきポイントを、大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックがわかりやすく解説します。
🍄1. 秋に急増!毒キノコによる食中毒の実態
秋はキノコの最盛期であり、全国でさまざまなキノコが出回ります。その一方で、毎年のように発生するのが毒キノコによる食中毒です。
厚生労働省の報告では、年間およそ50件前後の毒キノコ中毒が確認され、被害者数は100人を超える年もあるといわれています。そのうち数名が重症化、まれに死亡例もあります。
原因の多くは「食用キノコと間違えて採取・調理してしまった」こと。見た目が似ているうえ、同じ種類でも地域や生育環境によって姿が変わるため、「前に食べたから大丈夫」という判断は非常に危険です。
実際、ベテランの山菜採りでも誤って採取してしまうことがあります。キノコ狩りを楽しむ際は、「自分の判断だけで見分けない」ことが最も大切です。
🌰2. 食用とそっくり!代表的な毒キノコと見分け方
毒キノコの恐ろしい点は、食用キノコと見分けがつかないことです。代表的なものをいくつかご紹介します。
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・ツキヨタケ:ムキタケやシイタケに似ていますが、内部に黒いシミがあるのが特徴。食後数時間で嘔吐や下痢、腹痛が起こります。
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・クサウラベニタケ:ウラベニホテイシメジと間違われやすいキノコ。発汗や錯乱など、神経系に作用する中毒症状を引き起こします。
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・ニガクリタケ:強い苦味があり、食べると肝障害を起こすことも。小さな子どもが誤食すると特に危険です。
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・テングタケ:赤い傘に白い点々がある派手な見た目。幻覚や意識障害を起こす強い神経毒を持ちます。
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・ドクササコ:食後すぐには症状が出ず、数日後に手足の激痛を伴う中毒を起こす危険なキノコです。
これらはいずれも専門家でも見分けが難しい種類。どんなに詳しくても、少しでも不安があるものは「採らない・食べない」を徹底しましょう。
🍁3. 覚えておきたい4原則「採らない・食べない・売らない・あげない」
毒キノコ中毒を防ぐため、厚生労働省が呼びかけているのがこの4原則です。
①採らない:自分で判別できないキノコは採らない。公園や河川敷で見かけたキノコも要注意。
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②食べない:見た目や匂い、苦味では判断できません。「前にも食べた」は通用しません。
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③売らない:安全が確認されていないキノコを販売するのは法律違反になることも。
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④あげない:知人や家族に分けて中毒を起こせば、責任を問われる場合もあります。
このルールを守るだけで、ほとんどの食中毒を防ぐことができます。
大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、食中毒予防や家庭内の安全対策について、栄養指導を通じてアドバイスを行っています。お気軽にご相談ください。
🏥4. 万が一食べてしまったら?すぐに受診を
もし「食べた後に体調が悪くなった」「もしかして毒キノコかも」と思ったら、迷わず医療機関を受診してください。
主な症状には以下があります。
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・嘔吐・下痢・腹痛
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・発熱・発汗
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・意識もうろう・幻覚・錯乱
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・筋肉痛や手足のしびれ
ドクササコのように症状が数日後に出る場合もあり、放置すると重症化することがあります。
受診の際には「食べたキノコの残り」や「吐いたもの」などが診断に役立つことも。自宅で無理に吐かせるなどの処置は行わず、すぐに医療機関へ向かいましょう。
🌾5. まとめ|安全に秋を楽しむために
秋は自然と食の魅力があふれる季節ですが、油断すると大きなリスクにつながることもあります。
毒キノコによる食中毒を防ぐには、「採らない・食べない・売らない・あげない」を徹底し、見慣れないキノコには決して手を出さないことが鉄則です。
そして、少しでも体調の異変を感じたら、早めの受診が何より大切。
安心して秋を楽しむために、正しい知識と慎重な行動を心がけましょう。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。