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2025.10.20

“痩せる=健康”ではない?気づかないうちに進む大腸がんの初期サインとは

最近、特に食事制限や運動をしていないのに「なんだか痩せてきた気がする」と感じたことはありませんか?

健康的なダイエットによる減量は良いことですが、**「意図せず体重が減る」**場合は、体のどこかで異変が起きている可能性があります。

実はこの“痩せる”という現象、大腸がんの初期サインのひとつとして現れることがあります。特に中高年層では「痩せる=健康的」と考えがちですが、原因不明の体重減少は身体からの“危険信号”かもしれません。

この記事では、体重減少と大腸がんとの関係、注意すべきポイント、そして早期発見のための検査について詳しく解説します。


1. 秋だけじゃない!体重変化から見える大腸がんリスク

これまでの疫学研究では、体重の増減と大腸がんリスクとの関係が注目されています。

たとえば、ヨーロッパの「EPIC-PANACEA研究」では、BMIが高い男性ほど大腸がんリスクが上がる一方、体重の増減そのものには明確な関連が見られないとの報告もあります。

しかし、診断前の「原因不明の体重減少」ががん発見のきっかけになるケースは少なくありません。実際、大腸がん患者の中には、発見前の数か月で体重が急に落ちていた人が多く見られます。

つまり、「痩せる」ことが直接の原因ではないものの、「痩せ始める」ことががんのサインである可能性は高いのです。


2. なぜ“痩せる”症状が大腸がんに関係するのか?

体重減少と大腸がんが関係する理由には、以下のようなメカニズムがあります。

  • ・慢性炎症による代謝変化

     ↳がんの発生過程では、炎症性物質(サイトカイン)が増え、筋肉や脂肪が分解されやすくなります。

  • ・腫瘍による消化吸収障害

     ↳大腸内の腫瘍が栄養の通過や吸収を妨げることで、摂取しても十分に栄養を吸収できず痩せていくことがあります。

  • ・がん細胞によるエネルギー消耗

     ↳がん細胞は非常に活発で、多くのエネルギーを奪います。そのため、食事量が変わらなくても体重が減ることがあります。

こうした要因が重なり、体重減少という形で現れるのです。


3. 体重が減り始めたらチェックしたい4つのポイント

「気づいたら痩せてきた」と思ったとき、以下の点を確認してみましょう。

  1. 短期間での5%以上の体重減少

     数か月で急激に体重が減った場合は要注意です。

  2. 便通の変化や血便

     便秘・下痢を繰り返す、便に血が混じるなどの変化は大腸疾患のサインかもしれません。

  3. 倦怠感・食欲低下

     体重減少に加えて疲れやすさや食欲不振がある場合、がんによる代謝変化が関係している可能性があります。

  4. 貧血の有無

     慢性的な出血で鉄欠乏性貧血を起こしている場合もあり、血液検査で確認が必要です。

これらの症状が1〜2か月以上続く場合は、早めに消化器内科で検査を受けることが大切です。


4. 大腸がんの早期発見と体重管理の関係

定期的な体重チェックは、大腸がんの早期発見に役立つシンプルな健康習慣です。

特に50歳以降では、次のような点を意識しましょう。

  • 💡 定期的な大腸内視鏡検査を受ける

  • 💡 急な体重減少や便通異常があればすぐ相談する

  • 💡 バランスの取れた食事・運動・禁煙を心がける

体重変化に敏感になることで、「がんの早期発見」に直結するケースもあります。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、こうした体調変化をきっかけとした内視鏡検査・健康相談を行っています。


5. 体重減少を感じたら、まずは検査を

意図しない体重減少が見られたときは、以下の検査が推奨されます。

  • ・血液検査(貧血・炎症・肝機能・腫瘍マーカー)

  • ・大腸内視鏡検査:ポリープや初期がんの発見に有効

  • ・腹部CTや超音波検査:腸外病変や転移の確認に有用

検査を受けることで、「大腸がんではない」と安心できるだけでなく、別の疾患の早期発見にもつながります。


まとめ

「最近痩せたけど、特に何もしていない」──この変化は、体からの重要なサインかもしれません。

複数の研究で、体重減少は大腸がんの診断前にしばしば見られることがわかっています。

健康的な体重管理を心がけながらも、「意図しない痩せ方」を見逃さないことが、早期発見の第一歩です。

気になる体重変化があれば、早めに医療機関へご相談ください。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

 

【引用・参考文献】

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