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2025.10.22

日常の“げっぷ”が体からのSOS? 胃の異常を早期に見つけるために

「最近げっぷが増えた」「しつこく残る感じがする」――そんな経験はありませんか?

多くの人は「食べすぎたかな」「炭酸を飲んだからだろう」と思いがちですが、実はげっぷは体の中の異変を知らせるサインであることもあります。

とくに胃や食道のトラブル、そして胃がんの初期サインとして現れることもあるため、注意が必要です。

この記事では、げっぷの仕組みから、胃炎・逆流性食道炎・胆汁逆流などの病気、そして胃がんとの関連までを医師の視点でわかりやすく解説します。


1. げっぷとは? そのメカニズムと種類

げっぷとは、胃や食道にたまったガスが口から排出される現象のことです。

食事や会話の際に飲み込んだ空気、胃の中で発生したガスなどが原因で起こります。

げっぷには2つのタイプがあります。

  • 生理的げっぷ:食後や炭酸飲料の後に一時的に出る自然なもの

  • 症状性げっぷ:頻繁に出たり、ガス膨満感や不快感を伴うもの

後者の場合、胃や食道の疾患が関係していることが多く、注意が必要です。

特に、「げっぷが止まらない」「残る感じがする」ときは、単なる消化不良ではなく胃腸の機能異常炎症が隠れていることがあります。


2. げっぷと関係する胃の病気

げっぷが多い背景には、以下のような疾患が関係していることがあります。

■ 胃炎・萎縮性胃炎

胃粘膜が炎症を起こすと、ガスの動きが滞りげっぷが増えることがあります。

ピロリ菌感染が長期間続くと胃粘膜が萎縮し、消化機能が低下。結果としてげっぷや胃のもたれが出やすくなり、胃がんリスクの上昇にもつながります。

■ 逆流性食道炎

胃酸が食道に逆流し、胸焼けやげっぷ、喉の違和感を引き起こす病気です。

ストレスや肥満、加齢による噴門部のゆるみが原因になることもあります。

■ 胆汁逆流(胆汁性胃炎)

小腸側の胆汁が胃内に逆流することで粘膜を傷つけ、慢性炎症を引き起こす状態です。

研究では、胆汁逆流が前がん病変や胃がん進行に関与する可能性も報告されています。

■ 機能性ディスペプシア

検査で明らかな異常がないにもかかわらず、上腹部の不快感やげっぷが続く状態。

ストレスや自律神経の乱れも関与し、症状が慢性化しやすいのが特徴です。


3. 胃がんとげっぷの関係

げっぷが直接胃がんを意味するわけではありませんが、胃粘膜の異常炎症の長期化があると、胃がんが発生しやすくなります。

胃がんが進行する過程では、粘膜の萎縮や腸上皮化生などの変化が起こり、ガスの通り道や胃の運動機能が低下。

その結果、げっぷが増えたり、胃の張り感や違和感が続くことがあります。

注意すべきサイン

次のような症状がある場合は、胃がんを疑って検査を受けることが大切です。

  • げっぷが急に増えた・長引く

  • 上腹部の痛みやむかつきがある

  • 体重減少、黒色便、貧血がある

  • 50歳以上、または家族に胃がんの既往がある

  • ピロリ菌感染歴がある(または除菌していない)

これらの条件に当てはまる場合は、早めに**胃内視鏡検査(胃カメラ)**を受けましょう。


4. 胃がんの早期発見には検査が重要

胃がんは早期に発見できれば高い確率で治癒が可能です。

げっぷや胃の違和感が続く場合は、次のような検査を行います。

  • 胃カメラ(上部内視鏡):最も確実な検査法。粘膜の変化や早期がんを直接確認できます。

  • ピロリ菌検査:感染の有無を調べることで、胃がんリスクの把握につながります。

  • 血液検査:炎症や貧血などの全身状態をチェック。

ピロリ菌の除菌後は、6年以上経過すると胃がん発生率が半分以下になるという研究もあり、早期除菌が重要です。


5. 胃を守るための日常ケアと予防法

胃への負担を減らし、げっぷや胃炎・胃がんを防ぐためには、生活習慣の見直しも欠かせません。

食生活のポイント
  • ・塩分の摂りすぎを控える(高塩食は胃粘膜を傷つけます)

  • ・抗酸化作用のある野菜・果物を積極的に摂る

  • ・加工食品・喫煙・過度の飲酒を避ける

食事の習慣
  • ・よく噛んでゆっくり食べる

  • ・一度に食べすぎず、少量を数回に分ける

  • ・食後すぐ横にならない

生活習慣
  • ・適度な運動で胃腸の動きを整える

  • ・ストレスをためない

  • ・睡眠のリズムを整える

こうした小さな積み重ねが、胃粘膜を守り、胃がんの予防にもつながります。


まとめ

げっぷは一見「些細なこと」に思えますが、実は胃の健康を映す重要なサインです。

頻度が増えたり、ほかの症状を伴うときは、胃炎・逆流性食道炎・胆汁逆流、さらには胃がんの初期症状の可能性もあります。

胃カメラによる早期発見と、生活習慣の見直しで胃の健康を守りましょう。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

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  3. 3.The relationship between gastric cancer, its precancerous lesions and bile reflux: A retrospective studyJournal of Digestive Diseases
  4. 4.Diagnosis of Gastric Malignancy Using Gastric Juice α1‑antitrypsin — Hsu et al. / Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention
  5. 5.A Rare Case Involving the Inability to Belch — Case Report / Internal Medicine