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2025.10.28

痔と大腸癌を見分ける方法|症状別チェックと検査のすすめ

「トイレで血がついていたけど、お腹は痛くないし痔かな?」

そんなふうに自己判断していませんか?

しかし、その“血便”、本当に痔だけが原因とは限りません。

実は、大腸癌も痔も共通して「出血」というサインを出すため、見た目だけでの判断は非常に危険です。特に初期の大腸癌は痛みもなく、便通異常も軽度なため、「痔だと思っていたら癌だった」というケースも少なくありません。

この記事では、**痔と大腸癌の症状の違い・見分け方・受けるべき検査(大腸内視鏡)**についてわかりやすく解説します。


1. 痔と大腸癌の基本的な違いとは?

まず理解しておきたいのは、「痔」と「大腸癌」は発生部位も性質もまったく異なる病気ということです。

  • 痔(じ):肛門の外側または内側に炎症や血管の腫れが生じる良性疾患。便秘やいきみ、長時間の座位、出産などが原因で起こりやすい。

  • 大腸癌:大腸の粘膜にできる悪性腫瘍。放置すると腸管の閉塞や転移を起こすこともある。

どちらも「出血」を伴うことがあるため見分けにくいのですが、自己判断で“痔”と決めつけるのは非常に危険です。


2. 血便・出血の特徴で見分けるポイント

観察のポイント 大腸癌
血の色 鮮やかな血(鮮血) 暗赤色・赤黒い血
出血の場所 トイレットペーパー・便器に付着 便の中に混ざっていることが多い
痛みの有無 切れ痔では鋭い痛みあり 痛みがないことが多い
出血の頻度 排便時のみ、時々 持続的または繰り返す
その他の変化 肛門の違和感やしこり 便が細くなる、貧血、体重減少など

このように特徴を比較しても、外見だけでは確定的な判断は困難です。特に痔と大腸癌が同時に存在するケースもあるため、油断は禁物です。

3. 痔では見られにくい「赤信号サイン」

次のような症状がある場合は、早めに専門医の受診をおすすめします。

  • 便が細くなった・形が変わった

  • 便秘と下痢を交互に繰り返す

  • 原因のない体重減少

  • 立ちくらみや倦怠感(貧血)

  • 出血が何週間も続く、または繰り返す

これらは大腸癌など腸内の疾患のサインである可能性が高く、痔ではあまり見られません。


4. 最終診断に必要なのは「大腸内視鏡検査」

出血の色や頻度からある程度の推測はできますが、**確定診断に欠かせないのが「大腸内視鏡検査(大腸カメラ)」**です。

この検査によって以下のことがわかります:

  • 🔎 大腸の中を直接観察し、出血源を特定できる

  • 🔎 ポリープや腫瘍の有無を確認できる

  • 🔎 必要に応じて組織を採取(生検)できる

  • 🔎 早期の大腸癌や前がん病変(ポリープ)をその場で発見・切除できる

便潜血検査は簡便ですが、痔でも陽性になることがあり、陰性でも癌が隠れている場合があります。

そのため、異常があったら必ず内視鏡で確認することが大切です。


5. 予防と早期発見のためにできること

大腸癌の多くは、生活習慣の改善と定期的な検査で予防・早期発見が可能です。

  • 💡 食物繊維を多く含む野菜・果物・海藻を摂る

  • 💡 赤肉・加工肉・アルコールを控える

  • 💡 水分をしっかり摂取して便秘を防ぐ

  • 💡 排便時のいきみを避け、肛門に負担をかけない

  • 💡 40歳以上は1〜2年に1回の大腸内視鏡検査を

特に、家族に大腸癌の既往がある方は早めの検査が推奨されます。


🏥大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでの診療サポート

当院では、「血便が出た」「痔かもしれない」といった方に対して、おしりの診察から大腸内視鏡検査、痔の日帰り手術まで一貫して対応しています。

痛みに配慮した苦痛の少ない内視鏡検査を行い、結果はわかりやすく丁寧にご説明します。

「もしかして…?」と思ったら、早めの受診があなたの健康を守る第一歩です。


✅まとめ

  • ・血便=痔とは限らない

  • ・症状や出血の見た目だけで見分けるのは難しい

  • ・大腸癌と痔を見分ける唯一の確実な方法は大腸内視鏡検査

  • ・40歳以上・症状が続く方・家族歴がある方は特に要注意

  • ・早期発見で治療の選択肢と生存率は大きく変わる

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

  • 1.O’Brien M, Butner J, Marks I, et al. Comparison of the color of fecal blood with the anatomical location of gastrointestinal bleeding lesions: potential misdiagnosis using only flexible sigmoidoscopy for bright red blood per rectum. Diseases of the Colon & Rectum. PubMed
  • 2.Wong BC, et al. The value of flexible sigmoidoscopy for patients with bright red rectal bleeding. Diseases of the Colon & Rectum. PubMed
  • 3.Hamilton W., Round A., Sharp D., Peters T.J., et al. Symptoms and signs of colorectal cancer, with differences between proximal and distal colon cancer: a prospective cohort study of diagnostic accuracy in primary care. BMC Primary Care. BioMed Central