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2025.11.01

座薬で痔は治る?効くケース・効かないケースを医療の視点で整理

「お尻が痛い」「血が出る」「いぼのようなものがある」──そんな症状がそろうと、座るのも立つのもつらいものです。

そんなときに頼りたくなるのが“座薬”。市販でも手に入りますが、「本当に効くの?」「副作用は?」「いつまで使っていいの?」と疑問を感じる方も多いでしょう。

この記事では、痔のタイプ別に座薬が効くケース・効かないケースをわかりやすく整理し、正しい使い方や注意点についても詳しく解説します。


1. 痔の種類と座薬の役割

痔は大きく分けて4つのタイプがあります。

  • 内痔核:肛門の内側にできるいぼ痔。出血や脱出が主な症状で、痛みは少なめ。

  • 外痔核:肛門の外側にでき、強い痛みや腫れを伴うことが多い。血栓ができると激痛に。

  • きれ痔(裂肛):排便時に肛門の皮膚が裂けるタイプ。鋭い痛みと出血が特徴。

  • 痔ろう:肛門の中から膿が外に出るトンネルができる状態。手術が必要なことも多い。

このうち、座薬が効果を発揮しやすいのは内痔核や軽度の炎症・出血がある場合です。

肛門の内側に薬が直接届くため、炎症や腫れを抑え、痛みを軽減することが期待できます。

ただし、血栓性外痔核や痔ろう、重度の脱出を伴う痔核では、座薬だけでの改善は難しく、外科的処置や他の治療との併用が必要になることがあります。


2. 座薬が効くケース・効きにくいケース

◎効きやすいケース
  • ・内痔核の初期(出血や軽い脱出が中心)

  • ・軽い炎症やむくみ、排便後のヒリヒリ感がある場合

  • ・少量の鮮血が見られるが、強い痛みや感染がないとき

✕効きにくいケース
  • ・外痔核で血栓を伴う急性期の強い痛み

  • ・痔ろうや長期間続く脱出など構造的な問題がある場合

  • ・便秘や長時間のいきみなど、生活習慣の影響が大きいとき

座薬はあくまで**「炎症や痛みを抑えるサポート役」**。根本的な原因がある場合には、生活改善や手術などの治療を組み合わせることが大切です。


3. 座薬の主な成分と働き・注意点

痔の座薬には、症状に合わせてさまざまな成分が配合されています。

成分 主な働き 注意点
ステロイド(ヒドロコルチゾンなど) 炎症を抑える。痛みや腫れを軽減。 長期使用で皮膚が薄くなるリスクあり。医師の指示を守る。
血管収縮成分(フェニレフリンなど) 腫れを引かせ、出血を減らす。 高血圧や循環器疾患のある方は注意。
麻酔成分(リドカインなど) 痛みを一時的に和らげる。 あくまで対症療法。長期使用は避ける。
保護・修復成分(スクラルファートなど) 粘膜の修復を助け、再発を防ぐ。 比較的副作用が少なく、近年注目されている。

いずれも使いすぎや自己判断での継続使用はNGです。とくにステロイド入り座薬は、短期間・医師の管理下で使用することが原則です。


4. 座薬の正しい使い方と生活習慣の工夫

●正しい使い方
  1. ・手と肛門周囲を清潔にする。排便後が理想的。

  2. ・座薬の先端を少し濡らすと挿入しやすい。

  3. ・痛みがない範囲で、奥までゆっくり入れる。

  4. ・挿入後はしばらく安静にして、薬が流れ出ないようにする。

  5. ・医師や薬剤師の指示どおりの回数・期間を守る。

●生活習慣でのサポート
  • ・食物繊維と水分をしっかりとる(便を柔らかく保つ)

  • ・長時間のいきみ・座りっぱなしを避ける

  • ・ぬるめのお湯での座浴・入浴で血流を促す

  • ・トイレットペーパーで強くこすらない

薬の効果を長持ちさせるには、これらの生活改善が不可欠です。


5. まとめ:座薬の力を正しく理解しよう

座薬は、痔による痛み・炎症・出血を和らげる有効な治療手段ですが、すべての痔に万能ではありません

初期の内痔核や軽い炎症なら効果が期待できますが、重症化している場合や痔ろうなどでは、専門的な診断・治療が必要です。

もし「どの座薬が自分に合うかわからない」「市販薬でよくならない」と感じたら、早めに肛門科を受診しましょう。

専門医による診察で、適切な薬の選択と再発を防ぐ生活指導を受けることが、根本改善への近道です。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献(医学論文より)】

タイトル

著者

雑誌名

Effectiveness and tolerability of rectal ointment and suppositories containing sucralfate for hemorrhoidal symptoms: a prospective, observational study

Marik, A. R.; Miklós, I.; Csukly, G.; 他

International Journal of Colorectal Disease SpringerLink

5-ASA Suppositories in Hemorrhoidal Disease – DOAJ

不明(複数著者)

Canadian Journal of Gastroenterology DOAJ

Recombinate streptokinase vs phenylephrine-based suppositories in acute hemorrhoids (THERESA‑3)

他著者多数

臨床試験誌 (PubMed) PMC

Comparison of efficacy and safety between surgical and conservative treatments for hemorrhoids: a meta-analysis