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2025.12.02

強い痛みで座れない…“痔×排便時の激痛”の原因と今日からできる改善策

「うわっ、またトイレで痛くなった…」

排便の瞬間にズキッと走る激痛に思わず動きが止まってしまう——そんな経験をしたことはありませんか?

多くの人は「便が硬かっただけ」「痔ならそのうち良くなる」と軽く考えがちです。しかし、排便時に毎回強い痛みが出る状態は、放置してしまうと慢性化し、再発しやすくなったり、日常生活に支障をきたしたりすることがあります。

この記事では、排便時の激痛が起こる理由、痛みを伴いやすい痔の種類、放置のリスク、そして自宅でできる改善法と受診のタイミングまでを、分かりやすく整理して解説します。


1. なぜ「痔・排便時・激痛」が起きるのか?

排便時に強い痛みが出る背景には、肛門周辺の血管や粘膜が過度な圧力・摩擦・炎症を受けていることが関係しています。

痛みが起こる主な原因
  • ・硬い便による粘膜へのダメージ

  • ・強いいきみで肛門の血管が圧迫される

  • ・血栓ができて急に腫れる(外痔核)

  • ・裂肛(切れ痔)で神経が露出する痛み

さらに下記のような生活習慣が、痔を悪化させる大きな要因になります。

リスク因子
  • ・便秘/硬便

  • ・水分不足・食物繊維不足

  • ・長時間座る習慣

  • ・妊娠・加齢・肥満

  • ・便意を我慢する癖

排便時の激痛は「痔だから痛い」という単純なものではなく、便通・血管・粘膜・生活習慣の全体が関係している複合的な症状なのです。


2. 激痛を伴いやすい痔の種類と見分け方

同じ“痔”でも症状はさまざま。特に次の3つは排便時の激痛を伴いやすい代表的なタイプです。

① 外痔核(血栓性外痔核を含む)

肛門の外側が腫れ、血栓ができると 突然の激痛+紫色の腫れ が出現します。

立ち上がる動作や排便後に痛むのが特徴。

② 裂肛(切れ痔)

硬い便により肛門の皮膚に裂け目ができる状態。

  • 排便時に鋭い痛み

  • 便器や紙に鮮血

  • 排便後数分間の強い痛み

が典型です。

③ 内痔核の脱出・嵌頓

肛門内の痔核が外に飛び出し、締め付けられることで痛みが強くなります。

激痛とは限りませんが排便時の違和感や出血が続きます。

見分けるポイント
  • 💡 痛むタイミング(排便中・排便後・立ち上がるとき)

  • 💡 出血の有無

  • 💡 肛門の腫れ・色の変化

  • 💡 便の状態(硬便かどうか)


3. 痔・排便時・激痛を放置するとどうなる?

強い痛みを我慢したり、市販薬だけで長期間放置したりするのはおすすめできません。次のようなリスクが高まります。

放置によるリスク
  • 慢性痔核・慢性裂肛への移行

  • ・血栓性外痔核で歩けないほどの激痛

  • ・出血が続き鉄欠乏性貧血に

  • ・排便の我慢→便秘→さらに悪化の悪循環

  • ・手術が必要なケースに進行

特に激痛+出血がある状態は、早めの医療機関受診が勧められます。

受診の目安
  • ・排便時の激痛が続く

  • ・鮮血が出る

  • ・肛門周囲の腫れ・しこりがある

  • ・痛みで座れない

  • ・便秘と硬便を繰り返している

早めに医師が介入するほど、治療は軽く済みやすく、再発予防も行いやすくなります。


4. 自宅でできるケア&予防法

排便時の激痛を防ぐためには、便を柔らかくし、肛門への負担を減らすことが最重要です。

① 便を柔らかくする習慣

  • ・水分を1日1.5〜2L目安で

  • ・野菜・果物・海藻・豆類などの食物繊維を増やす

  • ・朝食後にトイレに行き習慣づける

  • ・軽い運動で腸の動きを促す

② トイレ習慣の改善

  • ・長時間トイレに座らない(スマホNG)

  • ・出ない時は無理にいきまない

  • ・足台を使い、ややしゃがむ姿勢にすると排便がスムーズに

③ 肛門のケア

  • ・やさしく洗浄し清潔を保つ

  • ・温座浴で血流改善

  • ・アルコール・辛い物・脂っこい物を控える

  • ・体重管理(肥満は痔の悪化因子)

これらを続けることで、痛みの軽減だけでなく再発予防にもつながります。


まとめ

硬い便・いきみ・長時間の座位など、日常の何気ない習慣が痔の悪化や排便時の激痛につながります。便を柔らかく保つ工夫と正しいトイレ習慣は、今日から始められる最も効果的な予防策です。

排便時の激痛や出血が続く場合は、早めに専門医へ相談することで、重症化や治療の長期化を防ぐことができます。肛門の痛みは我慢せず、気軽に受診してください。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

  1. 1.Pain at the First Post-hemorrhoidectomy Defecation Is Associated with Stool Form – Tanaka T. et al., Journal of the Anus, Rectum and Colon (JARC)
  2. 2.Bowel habits in hemorrhoid patients and normal subjects – T. Johanson et al., Diseases of the Colon & Rectum
  3. 3.Prevalence of Hemorrhoids and Their Risk Factors Among the Adult Population in Jazan, Saudi Arabia – Oberi S. et al., World Journal of Gastroenterology