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2025.12.25

下痢=過敏性腸症候群とは限らない?大腸がんとの重要な違い

「最近、下痢が続いているけれど、これって過敏性腸症候群なのかな?」「まさか大腸がんじゃないよね…?」

こうした不安を抱えながらも、誰に相談すればよいかわからず様子を見てしまう方は少なくありません。

下痢や便通の乱れは、ストレスや食事の影響などによる一時的な腸の不調で起こることも多く、実際には**過敏性腸症候群(IBS)**が原因であるケースがよく見られます。しかし一方で、大腸がんの初期症状として下痢や便通変化が現れることもあるため、「ただの下痢」と自己判断してしまうのは注意が必要です。

この記事では、

  • 「過敏性腸症候群(IBS)とはどんな病気なのか」

  • 「大腸がんによる下痢や便通変化の特徴」

  • 「両者の違いと、受診・検査を考えるタイミング」

  • 「日常生活でできるチェックポイントと予防法」

について、できるだけわかりやすく解説します。腸からのサインを見逃さないための参考にしてください。


1.過敏性腸症候群(IBS)とは?下痢型・便秘型の特徴

過敏性腸症候群(IBS)は、内視鏡や画像検査では明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・便の形の変化・残便感・お腹の張りなどが慢性的に続く病気です。

主に若年〜中年層に多く、ストレス、生活リズムの乱れ、食事内容、ホルモンバランス、腸内環境の変化などが関係すると考えられています。

IBSにはいくつかのタイプがあり、

  • 下痢が中心の「下痢型」

  • 便秘が中心の「便秘型」

  • 下痢と便秘を繰り返す「混合型」

    などがあります。

特徴的なのは、「排便すると腹痛が和らぐ」「緊張すると症状が悪化する」「症状に波がある」といった点です。

IBSはあくまで**腸の“動きや感覚”の異常(機能性疾患)**であり、がんのように腸の壁に腫瘍ができる病気ではありません。そのため、命に直接関わることは基本的にありません。

ただし、「下痢が続く」という点だけを見ると、次にお話しする大腸がんとも重なる部分があり、慎重な見極めが必要です。


2.大腸がんによる下痢・便通変化のサインと仕組み

大腸がんは、大腸の粘膜にできたポリープなどが徐々に大きくなり、腫瘍として進行していく病気です。

初期には症状が乏しいこともありますが、進行するにつれて便通の変化として現れることがあります。

代表的な症状には、

  • ・下痢や便秘が続く、または交互に起こる

  • ・便が細くなる(鉛筆状の便)

  • ・血便・黒っぽい便

  • ・残便感が続く

  • ・体重減少、貧血、疲れやすさ

などがあります。

これは、腫瘍が腸の内腔を狭めたり、粘膜から出血したりすることで、腸の正常な働きが妨げられるためです。

便秘が続いたあとに急に下痢のような排便になるケースもあり、「下痢=安心」とは言い切れません。

もちろん、下痢だけで大腸がんと決まるわけではありませんが、症状が数週間以上続く場合や、他の異常を伴う場合は検査が重要です。


3.「IBS?それとも大腸がん?」受診を考えるタイミング

次のようなサインがある場合は、早めに消化器内科を受診し、検査を検討しましょう。

  • ⚠ 下痢・便秘などの便通変化が4〜6週間以上続いている

  • ⚠ 血便、黒色便、鮮血が便に混じる

  • ⚠ 意図しない体重減少や貧血、強い疲労感がある

  • ⚠ 便が細くなった、残便感が続く

  • ⚠ 50歳以上、または大腸がん・ポリープの家族歴がある

これらが当てはまる場合、**大腸内視鏡検査(大腸カメラ)**による確認が大切です。

鎮静剤を使用すれば、眠っている間に検査を受けることも可能ですので、不安がある方も一度相談してみましょう。


4.日常でできるチェック&予防ポイント

日頃から次の点を意識することで、腸の変化に気づきやすくなります。

  • ☑ 便の回数・形・色を意識する(ブリストル便形状チャート)

  • ☑ 食物繊維・水分を意識的に摂取する

  • ☑ アルコール、喫煙、加工肉、塩分の摂りすぎに注意する

  • ☑ 適度な運動と体重管理を行う

  • ☑ ストレスを溜めすぎず、睡眠をしっかりとる

また、40〜50歳以上の方やリスクのある方は、症状がなくても定期的な大腸内視鏡検査が勧められます。


まとめ

下痢が続く原因として最も多いのは過敏性腸症候群(IBS)ですが、大腸がんによる便通変化の可能性も否定できません。

IBSは機能的な腸のトラブルである一方、大腸がんは構造的な異常です。血便や体重減少、便の細さ、症状の持続がある場合は、早めに検査を受けることが重要です。

腸からのサインを見逃さず、必要に応じて専門医へ相談しましょう。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

参考文献】

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  4. 4.“Association between irritable bowel syndrome and colorectal cancer: a nationwide population-based study.” Vangala et al., European Journal of Internal Medicine, 2013. 
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