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2025.11.09

「飲みすぎ・食べすぎ」が痔を呼ぶ?お尻が悲鳴を上げる前に知っておきたいこと

お酒を飲んでリラックスしたり、辛い料理で気分をリフレッシュしたり——そんな時間は、日々のストレスを和らげる大切なひとときですよね。

しかし、実はその「お楽しみ」が痔(じ)を悪化させる引き金になることがあるのをご存じでしょうか?

「最近お尻がムズムズする」「排便のとき血がつくようになった」…そんなサインがある方は、お酒や辛い物との付き合い方を少し見直す必要があるかもしれません。

ここでは、医療の視点から「お酒・辛い物が痔に与える影響」と、「無理なく続けられる予防法」について詳しく解説します。


1. お酒が痔に与える影響とは?

お酒を飲むと、体内の水分が失われやすくなり、腸の中の便からも水分が奪われてしまいます。

その結果、便が硬くなり、排便時に“いきみ”が強くなることで、肛門の静脈に過剰な圧力がかかります。

これが痔核(いぼ痔)や裂肛の悪化につながることがあります。

さらに、アルコールには血管を拡張させる作用があるため、肛門・直腸部の血管もうっ血しやすくなります。

長期的な大量飲酒では肝臓に負担がかかり、血流の循環が悪くなることで肛門部の血管にも影響を及ぼすことがあります。

つまり、お酒自体が「直接の原因」ではないものの、痔を悪化させる間接的な要因として無視できません。

「飲みすぎ」「水分不足」「便秘」などが重なると、知らぬ間に痔のリスクを高めてしまうのです。


2. 辛い物(スパイス・唐辛子類)が痔を刺激するメカニズム

辛さの成分であるカプサイシンは、腸や肛門の粘膜を刺激します。

辛い食事の後に「排便時にヒリヒリした」「出したあとしみる」と感じたことがある方も多いでしょう。

これは、カプサイシンが腸を刺激し、便通が乱れたり粘膜の炎症を起こしたりするためです。

また、辛い物を食べすぎると便が柔らかくなりすぎて下痢になったり、逆に便秘を引き起こしたりと、便のリズムが乱れやすくなります

このような「いきみ」「腸の刺激」「粘膜の負担」が積み重なると、痔の症状が悪化することがあります。

痔を持つ方や肛門部が敏感な方は、辛さを少し控えたり、食後に水分・食物繊維を補うなどの工夫が効果的です。


3. 「お酒×辛い物」の相互作用で痔リスクが倍増?

お酒と辛い物を同時に摂ると、痔への影響がさらに強まります。

お酒による脱水・血管拡張に、辛い物による粘膜刺激・便通異常が重なることで、まさに「ダブルパンチ」となってしまうのです。

飲み会の翌日に「便が出にくい」「お尻がヒリヒリする」「出血した」という症状が出るのは、この組み合わせが原因であることも少なくありません。

また、お酒を飲んだ後にトイレで長居したり、スマホを触りながらいきむ癖も痔の悪化要因になります。

そのため、当院では「飲酒+辛い料理を楽しんだ翌日は、水分・食物繊維・排便リズムのケアを重点的に」とお伝えしています。

ミネラルウォーターや温かいお茶をこまめに飲む、辛い料理を続けて食べない、トイレでは無理にいきまない——これだけでも大きな違いがあります。


4. ライフスタイルでできる痔の予防・悪化防止ポイント

痔を防ぐためには、日常生活のちょっとした工夫が大切です。

  • 💡 水分をしっかり補う:お酒を飲むときは、1杯につき1〜2杯の水を。脱水を防ぎ、便を柔らかく保ちます。

  • 💡 食物繊維を意識する:野菜・果物・全粒穀物などを摂り、便の通りをスムーズに。

  • 💡 辛い料理の頻度・量をコントロール:辛い物の後は水分と繊維をプラス。座浴で肛門部を清潔に保つのもおすすめです。

  • 💡 トイレでは“いきまない・長居しない”:スマホを見ながら座ると、直腸に血液がたまり痔を悪化させます。

  • 💡 軽い運動を取り入れる:デスクワーク中心の方は、1時間に一度は立ち上がる習慣を。

これらを意識するだけで、痔の発症や再発リスクを大きく下げることができます。


5. まとめ:お酒も辛い物も“上手に楽しむ”ことが大切

お酒や辛い物を完全にやめる必要はありません。大切なのは、「摂取量・頻度・その後のケア」です。

飲んだあとは水分をしっかり摂る、辛い料理の翌日は胃腸を休ませる、便意を我慢しないなど、小さな習慣が痔の予防につながります

お尻の健康を守りながら、無理なく食を楽しむことこそ、快適な毎日の第一歩です。

大田大森胃腸肛門内視鏡クリニックでは、こうした生活習慣と痔の関係についても丁寧にご説明し、治療とケアの両面からサポートしています。

監修医師 大柄 貴寛

国立弘前大学医学部 卒業。青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2020年10月大田大森胃腸肛門内視鏡クリニック開院、2024年12月東京新宿胃腸肛門内視鏡・鼠径ヘルニア日帰り手術RENA CLINIC開院。

【参考文献】

  1. 1.[Is there a correlation between dietary habits and hemorrhoidal disease/雑誌名: Diseases of the Colon & Rectum.
  2. 2.Risk factors for hemorrhoidal disease among healthy young and middle-aged Korean adults /(最初の著者 Lee 他)/雑誌名: International Journal of Colorectal Disease. 
  3. 3.Alcohol and hemorrhoids: Possible links and more/雑誌名: Medical News Today